紅葉の撮り方(応用編)|思い通りに独創的な作品を撮る!秋の撮影テクニック6選
「紅葉を毎年撮っているけど、いつもワンパターンになる・・・」と悩んでいる方へ。
独創的な紅葉写真を撮れる!紅葉写真の表現テクニックを紹介します。
一味違った紅葉写真でライバルに差をつけちゃいましょう!
ここまで、基礎編では紅葉を色鮮やかに撮る基本の撮影を、構図編ではいろんなシチュエーションに使える構図のテクニックを紹介しました。
この記事ではそうした基本を活かしながら、独創的な紅葉作品を撮るテクニックを紹介します。
どれも頭に入れておくだけで、実践で役に立つテクニックですので、ぜひ撮影現場で活用してくださいね。
Contents
紅葉写真における作品性アップの条件とは?
あらためて「素晴らしい紅葉写真ってなんだろう?」と考えてみましょう。
写真の意図を伝わりやすくするために、基礎編ではシンプルにキレイな紅葉だけを撮る方法をお伝えしました。
その撮り方でも十分人に伝わる紅葉写真を撮れるのですが、ある要素を加えると紅葉写真は劇的に見違えます。
その要素とは、「光」そして、紅葉にプラスアルファを加えること、つまり「足し算」です。
写真において、最高の演出道具は光です。光の条件が変わるだけで、紅葉写真の印象は全く違ってきます。
そして、紅葉そのものだけでなく、紅葉にマッチしたプラスアルファを足し算することで、写真の魅力はワンランクアップします。
ただし、なんでもかんでも足し算で画面に入れればよいわけではありません。紅葉と関係ない人工物(電線、カラーコーン)など、足し算するとかえって作品性を落としてしまうものもあります。
では「光」と「足し算」について順番に解説します。
最高の演出道具「光」で紅葉を浮かび上がらせよう
基礎編では光の向きとして順光、サイド光、逆光の3つを紹介しました。
ここで紹介するのは「スポット光」です。木と木の間から差し込む太陽の光、いわゆる木漏れ日ですね。スポット光は紅葉をドラマチックに演出してくれます。
たとえばこちらの作品。どこにでもある紅葉ですが、スポット光が一箇所に差し込んでいます。このスポット光が当たっている紅葉に露出補正で露出を合わせると、影になっている周辺部分が暗くなります。いわゆる露出差(明暗差)ですね。
すると、暗いバックに浮かび上がる紅葉という絵を作ることができます。
次は、同じような木漏れ日ですが、紅葉ではなく岩に写った影を主題にした作品です。影にピントを合わせて紅葉をボカしているので、影が主役というのがよくわかりますね。
スポット光を少し離れた場所から見つけられると、このように木漏れ日が差し込んでいる様子がわかります。わずか数十秒の瞬間だったそうなので、シャッターチャンスを確実に捉える心の準備をしておきたいですね。
おなじスポット光でも、雲の合間から差し込む光を利用すると、よりスケールの大きな写真になります。
少し離れた紅葉に雲の合間から差し込んだ光が当たっていたら、シャッターチャンスです。光が当たっている場所に露出補正で露出を合わせると、光の帯に紅葉が浮かび上がる様子を撮ることができます。
相性抜群!紅葉と滝を絡めて作品をつくろう
ここから「足し算」について紹介します。足し算で大切なのは、紅葉に何をプラスアルファするか?です。
紅葉写真には紅葉と相性がよい定番のプラスアルファがあります。それを知っておくだけでも作品作りがずいぶん楽になりますよ。
定番中の定番は滝です。たとえばこちらの作品、赤の紅葉、緑の葉、奥に見える滝、と3つの要素がマッチした足し算になっています。
このように、紅葉になにかをプラスアルファすることで、紅葉写真の作品性がアップすることがよくわかりますね。
もともと紅葉と水は非常に相性がよいのですが、その中でも滝と紅葉はベストマッチです。
滝の水の流れを白い線のように撮りたい場合、シャッタースピードを遅くする必要があります。目安は1/8秒、手ブレを抑えるために三脚は必須です。また風で紅葉が動くと紅葉がブレて写ってしまうので、できれば風のないタイミングで撮影できるとベストです。
あるいは、こちらの作品のように岩肌に落ちた紅葉を使って、さり気なく秋の雰囲気をかもし出すこともできます。これなら多少の風があっても紅葉が動かないので安心できますね。
あるいは風を利用して、紅葉が舞い散る様子を収めたのがこちらの作品です。これも一瞬の出来事だったそうですよ。
リフレクションで見た人を驚かせる紅葉写真を撮ろう
次に紹介するのはリフレクション、つまり水面の反射です。
このように、色鮮やかな紅葉が湖面に反射して鏡像を作っています。こうしたリフレクションの写真にはシンメトリー(対象)構図が向いています。画面の中央付近に水際を配置して、上下が対象になるように構図を決めるのが定番です。
風がある条件では水面が波立ってキレイなリフレクションが撮れません。できれば風のない穏やかな条件で撮影したいですね。
実像の紅葉に比べて、写り込んだ紅葉はどうしても暗くなったり鮮やかさが落ちることがあります。もしRAW現像レタッチが使えるのなら、写り込んだ方の紅葉を補正して実際の紅葉に近づけると、より見た人を驚かせる紅葉写真に仕上がります。
リフレクションの作品はシンメトリーだけではありません。このようにカメラを下に向けて、池に落ちた紅葉と池に写り込んだ頭の上の紅葉を同時に撮ることで、「どうやって撮ったの?」と一瞬戸惑うような紅葉作品を撮ることができます。
この場合、ピントは主役にしたい方に合わせるのが基本です。池に落ちた紅葉と、写り込んだ頭の上の紅葉のどちらにピントを合わせていいかわからなくなったら、それぞれにピントを合わせて撮っておいて、あとでじっくり見比べるとよいでしょう。
リフレクションの比率で写真の雰囲気を変えることができます。例えばこちらの作品は、水面に写り込んだリフレクションの割合を多くして、幻想的な雰囲気を表現しています。
ここまでリフレクションを活用した作品を紹介しました。先ほどの滝にリフレクションを足し算することで、このような作品を撮ることができます。
赤と黄色の紅葉、奥に見える滝、手前の水面のリフレクション、と4つの要素が足し算されていますが、違和感なくマッチしていますね。
自然が見せる造形アート!グルグル紅葉作品を追求してみよう
渓谷に紅葉を撮りに行ったら、ぜひ試してもらいたいのがグルグル作品です。
グルグルとはこのような写真です。水面に落ちた紅葉が水の流れで円を描いて流れる様子をスローシャッターで撮影する方法です。
グルグルを撮影するには三脚が必須です。シャッタースピードの目安は紅葉の量と流れるスピードで変わります。
シャッタースピードが早すぎると紅葉の流れが表現できず、またシャッタースピードが長すぎると紅葉の流れが水面に消えてしまいます。
紅葉の流れは非常にゆっくりなので、シャッタースピードを1秒から30秒までいろいろ変えてみて、一番良い条件を探してみてください。
構図のポイントは、グルグルと動かない静物を画面に入れることです。静と動を一緒に撮ることで、紅葉の流れをより印象づけることができます。
渓谷まで出かけることができない場合は、川の流れでも同じような作品を撮ることができます。落ち葉が水面を動いている様子を見つけたら、ぜひグルグル作品を狙ってみましょう。
紅葉と人物を絡めて写真にストーリーを語らせよう
紅葉の名所で撮影すると、大勢の観光客が画面に入りがちです。写真を観た人は真っ先に人物に視線が集中するので、人物を安易に入れてしまうとせっかくの紅葉写真が台無しになってしまいます。
ただし、紅葉の雰囲気にマッチした人物を効果的に入れると、写真にストーリー性が生まれます。写真を観た人が頭の中で物語を想像してくれるので、写真に深みが出てきます。
ここでは紅葉にマッチした人物を入れた例を紹介します。
こちらは紅葉とお寺の門を撮影した紅葉写真に通りがかった親子を入れた作品です。人物がいなくても作品として成立していますが、傘を指した親子が配置されることで「雨の中、紅葉を見に来たのかな?」と物語を想像させますね。
人物は小さなシルエットとして写っていますが、主役が人物、紅葉は脇役になっていることがわかります。それくらい写真に写った人物は存在感があります。くれぐれも適当に人物を画面に入れないようにしてくださいね。
お二人のお年寄りが日向ぼっこをしているシーンです。優しい日差しに包まれて、お二人の会話の内容が聞こえてくるように感じますね。
同じくお年寄りと紅葉をマッチさせた作品です。みなさんのポーズが同じにもかかわらず、服の色がそれぞれ異なっているので、統一感がありながらリズム感がありますね。
構図編で紹介した額縁構図に人物をマッチさせると、このような作品に仕上がります。一心に祈るピンと張り詰めた空気が伝わってくるようです。
こちらは公園の紅葉と人物をマッチさせた作品です。決して華やかではない紅葉ですが、紅葉と同色の服を着た人物を画面のポイントになる場所に配置しているので、構図が安定していますね。
最後は紅葉を描く人を主役にした作品です。まさに芸術の秋を表現した一枚ですね。
このように紅葉にうまく人物を配置すると、作品にストーリー性が生まれるので効果的です。ただし、肖像権にはくれぐれも注意してください。
原則、人物が特定できる写真を公開することはNGです。今回紹介した作品はすべて後ろ姿を撮影しています。もし正面から顔がわかる大きさで撮影した写真をウェブで公開すると、肖像権侵害のトラブルになる危険があります。
最近はカメラマンのマナーが社会問題になりつつありますので、肖像権に配慮した撮影を心がけてくださいね。
生き物や乗り物を紅葉と絡めて動きを表現してみよう
紅葉にプラスアルファを絡めて足し算する場合、紅葉の「静」に対して「動」の被写体を足し算するのも有効です。
ただし紅葉風景の中に動物や乗り物を配置すると、撮影者が思っている以上に写真を観た人はそちらに意識が引かれます。
したがって、動物や乗り物を配置する場合は、それだけで成立するくらいしっかりした被写体を選びましょう。中途半端に配置するのはNGです。
例えばこちらの写真。渓谷の紅葉に列車が通過する様子を捉えています。もしこの電車の配置が中途半端だったら作品が台無しになってしまいますが、ちょうどよい場所に列車が配置されていますね。
こちらはご自身の乗用車を紅葉に絡めて足し算しています。赤い車は風景にとてもよくマッチするので、もし車を購入されるときは赤い車を選ぶとよいかもしれませんね(笑)
こちらの作品は動物と紅葉を絡めています。紅葉そのものはリフレクションなので目立っていませんが、十分に秋の雰囲気を感じることができますね。
まとめ
基礎編、構図編、応用編と紅葉写真の撮り方を紹介してきました。紅葉はさまざまな表現を楽しめる面白い被写体です、ぜひご自身の創造性を発揮して、素敵な紅葉写真をつくってくださいね。