【ホタル撮影】ヒメボタル撮影の第一人者が蛍の撮り方をレクチャーします
「ホタルの写真を撮ってみたいけど、どうすればいいかわからない…」と悩んでいる方へ。
夜の風景を彩るホタルは、初夏の時期にしか撮れない日本の季節を彩る被写体です。一見、難しそうなホタル撮影ですが、実はホタルは夜景を撮る延長で撮れます。
デジタル一眼レフと簡単な画像編集を使えば、初心者でも幻想的なホタルの光跡を描けます。
この記事ではホタル作品でネイチャーズベストフォトグラフィーインターナショナル2017のワイルドライフ部門において世界の10傑に選ばれた経歴を持つプロ写真家が、初心者向けにホタル撮影の基本をお伝えします。
真っ暗闇の中、ホタル撮影を通して自然と一体化する楽しさを実感してもらえると嬉しいです。
ホタル撮影を解説してくれるプロ写真家
地球写真家 加藤文雄
1964年愛媛県に生まれ、瀬戸内海を目の前に幼少期を過ごす。国内および海外の自然やイルカ、クジラなど生き物の写真を撮影。雑誌での執筆活動の他、講演、写真展、ワークショップ、アサインメント、ティーチング、ガイド、テレビ出演など幅広く活動。2004年、人工尾びれプロジェクトに水中カメラマンとして参加。翌年、イルカの写真集「FUJI」(講談社)を出版。2012年、Nature’s Best Photography Japan Awardでニホンザルの作品が準優勝。およびSmall World部門でヒメボタルの作品が優秀賞。2017年、Nature’s Best Photography International AwardのWildlife部門で、ヒメボタルの作品が選出される。現在、地球写真家として、地球を舞台に自然や生き物の写真を撮り続けている。ヒメボタル撮影の第一人者。(加藤文雄 website)
Contents
絶対に守ってほしい!ホタル撮影のマナー
ホタルが生息する地域では、ホタルの住む環境を守り育てるために、地域の方々が様々な努力をされています。
近年、カメラマンのマナーの悪さによって撮影禁止の場所が増えています。撮影に出かけるカメラマンは下記のマナーを必ず守り「写真撮影よりホタルや自然への配慮を最優先する」意識で現地に入ってください。
【必読】ホタル撮影のマナー
- 光を出さない(車のヘッドライト、懐中電灯、カメラのランプはNG)
- 虫除けスプレーを使わない
- 不用意に茂みに入らない
- ホタルを捕まえて持ち帰らない
ホタルの光は求愛行動です。不用意に人工の光で照らすと、ホタルの生殖を邪魔してしまいます。すると翌年以降のホタルが生息できなくなる可能性があります。
そのためには、余計な光を出さないことです。間違えてもストロボを光らせてはいけません、まともな写真を撮れないだけではなく、周りの撮影者にも迷惑をかけてしまいます。
また車のヘッドライトで茂みを照らしたり、ハザードランプを点灯したままにしたり、懐中電灯の明かりをホタルに向けないでくださいね。
子供の頃にホタル狩りを楽しんだ記憶がある方もいらっしゃいますが、現在はホタルを持ち帰るのは厳禁です。また不用意に茂みに入らないこと、光っていないホタルがそこにいるかもしれません。
マナーをしっかり守り、撮影者、地域の方、ホタルの自然が笑顔になれる撮影を望みます。
光跡が線に写るゲンジボタルと玉ボケに写るヒメボタル
ホタルは世界に約2000種類、日本では約40種類が生息していると言われています。
日本で撮影できる代表的なホタルの種類として、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルの3種類があります。
普段、私達がよく見かけるのはゲンジボタルまたはヘイケボタルです。黄緑色がかかった強い光がスーっと流れる光跡です。
ヒメボタルは光を嫌う性質があり生息地が限られるので目にする機会は少ないかもしれません。
ヒメボタルはオレンジがかかった色の光を点滅発光します。ゲンジボタルとヒメボタルの光跡を作品に仕上げると、次のようになります。
流れるような光跡のゲンジボタルと、大きな玉ボケが印象的なヒメボタル。撮りたいイメージに合わせてホタルの種類を選ぶのも楽しみですね。
ホタルの撮影場所と時期を調べるコツ
ホタルが出現する時期は6月初旬の19:30ころ
一般的にホタルが出現する時期は6月初旬の19:30ころです。ただしホタルの種類、生息場所、その年の気候、その日の気象状況によって発生時期は異なります。5月中旬から出現したり、夜中23時頃に光り始める場所もあります。
目安としてじめじめと湿気を感じられて、蚊の飛び始めるシーズンがホタルの出現時期です。
その日の天気によってもホタルの出現数が変わります。気温と湿度が高くじめじめして、風が少ない日は比較的ホタルの数は多くなります。逆に気温が低く、風が強い日はホタルの数は減ってしまいます。
こまめに出現場所に足を運んで傾向を掴む、周辺で情報を聴き込む、天気予報をチェックする、ウェブでホタルの出現情報をチェックして出かける時期を選ぶとよいでしょう。
ネットで情報収集する
ホタルの撮影場所はネットで大まかな場所を情報収集することができます。
Googleで「ホタル ○○(地名)」と検索すると、その地域のホタル名所や撮影ブログを閲覧できます。
過去の撮影ブログを閲覧すると、撮影ポイントや撮影時期がわかります。また作例のイメージも掴みやすいでしょう。
ただし撮影に向いた場所かどうか?は実際に現地に行ってみないとわからないことが多いので、あくまでも目安として考えておきましょう。
観光協会に問い合わせる
ホタルを地域おこしにPRしている自治体では観光協会に問い合わせると親切にホタルの情報を教えてくれることがあります。
「3日前から飛び始めました」「橋の下にたくさん出るようです」など現地の詳しい情報を教えてくれることがあります。自宅から遠く離れた場所に撮影に出かけるときには、こうした現地の窓口を積極的に利用しましょう。
日没時刻と月齢をチェックする
出かける前にチェックしておきたいのは日没時刻です。ホタルの撮影では明るいうちに撮影ポイントを決めて、日没前に作品の背景となるベース画像を撮影します。
ホタル撮影ではヘッドライトなど照明を使えないので、暗くなってからカメラの準備を行うのはかなり大変です。したがって日没時刻の数時間前には余裕をもって現地に到着するようにしましょう。
また、月齢もチェックしておきましょう。蛍の光はとても弱いので、できるだけ明るく撮る必要があります。月明かりが強いと月光に照らされた背景が明るく写ってしまうので、ホタル作品としては印象が弱くなってしまいます。
明るいうちに現地をロケハンする
ロケハン(ロケーション・ハンティング)とは本番撮影の前に撮影場所のめぼしをつけておくことです。明るいうちに現地を散策して、お店や宿など現地の人にホタルの出現情報をヒアリングしておきましょう。
ある程度撮影ポイントを絞り込めたら、実際にカメラを構えてフレーミングして、背景が絵になるかどうか確認しておくといいですね。近くに街灯がないか?遠くの民家の明かりが写り込まないか?などもチェックしておきましょう。
いくらホタルが出そうな場所でも背景の絵としてまとまりがなければ最終的な作品に仕上げられないことがあります。背景選びでは、写真として成立するかどうかの視点で選びましょう。
ホタルは木の陰や茂みの暗がりを好みます。ロケハンではそうした場所に注目して、ホタルが飛ぶイメージを掴んでおきましょう。
小川があればカワニナがいるかどうかチェックしてみてください。カワニナはゲンジホタルの幼虫の餌なので、カワニナがいればホタルの生息地として期待できます。
ホタル撮影のおおまかな流れ
ホタル撮影は比較明コンポジットが基本
ホタルの撮影は夜景の撮影とよく似ています。カメラを三脚に取り付けて、シャッター時間を長く設定して撮影します。
夜景撮影と異なるのは、1枚の写真で完成ではなく、シャッタースピード8秒程度の写真を何枚も撮影して、後で画像編集することです。ホタルの光跡を画面に収めるためには、長い時間をかけて撮影して、画面の中に複数の光跡を配置して写真を構成します。
フイルムカメラのときは数十分の長時間露光が必要でした。ノイズも大きく、途中でヘッドライトなどの明かりが入ると撮影が台無しになっていました。
しかしデジタルカメラの普及でホタルの撮影は飛躍的にやりやすくなりました。ホタルの光跡を数秒にわけて連続撮影して、撮影後の合成で一つの作品を作り上げる方法で「比較明コンポジット(合成)」と呼ばれます。
ホタル撮影の手順は次のとおりです。ベースになる背景を日没前に撮影します。このときはホタルが飛んでなくても大丈夫です。暗くなって蛍が飛び始めたら連続撮影を始めます。撮影後にパソコンでベースの画像とホタルの光跡をソフトで合成します。
比較明コンポジットの概要
ホタル撮影で使用する画像編集の手法は「比較明コンポジット」あるいは「比較明合成」と呼ばれています。これは下の図のように、何枚かの写真を重ね合わせて、明るい場所を抜き出す方法です。
ここで合成という言葉に違和感を覚える方もいらっしゃると思います。シャッターを切ったまま作品を仕上げるのが本来の姿で、合成は邪道だと考える方です。
そうした考え方もあると思いますが、比較明コンポジットの手法を使うとホタル撮影だけでなく、星景撮影、花火撮影など幅広いジャンルに応用が効きます。また長秒露光撮影では決して撮れない作品を創ることもできる、デジタルならではの撮影方法と言えます。
たとえばこちらの作品はホタルの光跡と星空を合わせて撮影した作品です。フイルムカメラの長秒露光ではこうした作品を撮ることは不可能なので、デジタル撮影ならではの作品と言えますね。
長秒露光撮影に対する比較明コンポジットのメリットは(1)画像を選んで合成するので不要なカットを除去できる(2)露光時間が数秒と短いので空の白飛びを抑えられる(3)おなじく露光時間が短いのでノイズを抑えられる、の3つです。
比較明コンポジットは必要なホタルの光跡だけを選んで写真を構成できるのでカンタンに美しい光跡を創れます。また背景と光跡を別の露光条件で撮影できるので、背景の明るさを調整してイメージに近いホタル作品を創り込むこともできます。
ホタル撮影の準備
服装
ホタルの撮影は人里離れた山奥に出かけることが多いので、アウトドアに向いた服装がよいでしょう。
虫刺されを防ぐために長袖、長ズボンがおすすめです。また急に冷え込むことがある時期なので、防寒用の上着も忘れないように。山道を歩いたり、川のそばで撮影することもあるので、履き慣れたスニーカーまたは軽登山靴、長靴があると便利です。
カメラ機材
(1)カメラとレンズの選択
カメラは高級な機材は必要ありません。エントリー機、ミラーレスカメラで大丈夫です。ただしリモコンではなくレリーズで連続撮影ができるカメラを持参してください。
ホタル撮影は非常に暗いシチュエーションで撮影するので、開放F値の明るいレンズがおすすめです。カメラを買ったときについてくる標準キットズームレンズでも撮影できますが、できれば開放F値がF2.8以下の明るい単焦点レンズが望ましいですね。
焦点距離はフルサイズ換算で50mmの標準レンズが使いやすいです。シチュエーションによっては広角レンズや望遠レンズも用意しておくと良いでしょう。
(2)三脚
同じ場所に長時間カメラを据え付けた状態で撮影するので、三脚が必要です。風景撮影ではしっかりした造りの三脚が必須ですが、ホタル撮影では軽量の三脚でも構いません。
なぜなら、ホタル撮影では複数台のカメラを設置して同時に撮影することがあります。その場合、カメラの台数だけ三脚が必要なので、持ち運びを考えると軽量タイプの三脚のほうが便利なことがあります。
三脚選びの基本を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
(3)レリーズ
ホタル撮影ではシャッタースピード数秒の連続撮影を行います。カメラのドライブモードを連写モードにして、レリーズのボタンを押しっぱなしにしてロックします。
すると数秒間のスローシャッターが切れた直後に、次のシャッターがオンになるので、撮影をスタートすればカメラを放っておくだけでホタルの光跡を撮影し続けてくれます。
カメラのインターバル撮影機能を使うこともできますが、シャッターとシャッターの間に時間差が生じてホタルの軌跡が途切れることがあるので注意しましょう。
もし予備のカメラをお持ちの方は、ぜひ2台目、3台目のカメラを持参しましょう。ホタルの出現場所はその日によって変わるので、目をつけた場所にそれぞれカメラを設置しておけば、1日に複数の場所で撮影することができます。
複数のカメラを持参する場合は、三脚とレリーズもカメラの台数だけ用意するのを忘れないでくださいね。
撮影の小物
(1)赤いランプのあるヘッドライト
ホタルは光を嫌うことはすでに述べました。とはいえ、真っ暗な中で撮影の準備を行うのは大変です。そこでホタルへの影響をできるだけ少なくするために、赤い光を発光できるヘッドライトを用意しておきましょう。手持ちのヘッドライトに赤色のセロファンを貼ることで代用できます。
ヘッドライトの使用はどうしても何かを確認したければいけないときなど最小限にとどめるようにしましょう。
(2)テープ
あると便利なアイテムがテープです。ホタル撮影は長時間シャッターを切り続けるので、ピント位置が動かないようにピントリングをテープで固定します。またカメラのメモリカードアクセスランプを隠す用途でも使用します。
白いテープをカメラと三脚に貼っておけば、暗闇でも目立つのでカメラがどこにあるかわかりやすくなります。
おすすめは剥がした跡が残りにくいパーマセルテープです。白色と黒色の2本を用意しておくと便利です。
(3)黒い布
50cm角程度の光がもれない黒い布を用意しておきましょう。撮影中に背面液晶で撮影結果を確認したいとき、背面液晶の光が漏れるのを防げます。
(4)ビニール袋
ホタル撮影中に突然雨に見舞われることがあります。カメラ用品としてカメラ用の雨具などありますが、安上がりで便利なのがスーパーやコンビニのビニール袋です。どこでも手に入るし、サッとすぐにかぶせることができるので、ぜひカメラの台数分を用意しておきましょう。
(5)熊よけの鈴
人里離れた場所で撮影する場合は、念のために熊よけの鈴を用意しておきましょう。
RAW現像&レタッチソフト
撮影後に画像編集を行うために、RAW現像と比較明コンポジットのソフトを準備しておきましょう。
この記事で使用する画像編集ソフト
・RAW現像 … Lightroom Classic CC
・比較明コンポジット … Photoshop CC
上記のソフトを持っていない場合は、カメラを買ったときについてくるメーカーのRAW現像ソフトでも大丈夫です。また比較明コンポジットはKikuchiMagick(Windows) / StarStaX(Mac)というフリーの便利なソフトがあるのでこれを使っても大丈夫です。
ホタル撮影の手順
ホタル撮影の手順1|明るいうちにカメラ設定を行う
明るいうちにやっておくカメラ設定を説明します。
(1)AF補助光をオフ
AF補助光とは暗いシチュエーションでオートフォーカスを働きやすくするために小さなライトが光る機能です。小さな明かりでもホタルにとっては有害ですし、他の撮影者の迷惑になります。
またホタル撮影ではオートフォーカスではなくマニュアルフォーカスを使用するのでAF補助光は意味がありません。必ずオフにしておきましょう。
(2)手ぶれ補正をオフ
手ぶれ補正はカメラを手持ちのときに有効に働く機能ですが、カメラを三脚に取り付けたときは誤動作してブレが発生することがあります。最近のカメラとレンズは誤動作しにくいようになっていますが、余計なミスを防ぐために手ぶれ補正はオフにしておくことをおすすめします。
(3)高感度撮影・長時間露光のノイズ低減をオフ
カメラによって、ISO感度を高く設定したときやシャッタースピードが長いときにノイズを抑える機能があります。便利な機能に思えますが、これをオンにすると1枚シャッターを切るたびにノイズ処理が入るので、連続して次のシャッターを切れなくなります。
RAWデータを保存しておけば、撮影後のRAW現像でノイズを処理することができます。スムーズな撮影のためにノイズ低減機能はオフにしておきましょう。
(4)アクセスランプをテープで隠す
アクセスランプとはカメラがメモリカードを読み書きするときに光るランプです。この光もホタルにとって有害な光ですので、黒いテープを貼るなど光がもれない工夫をしておきましょう。
(5)RAW+JPEG形式で保存
撮影データはRAW+JPEG形式で保存するのがおすすめです。RAWで保存しておけばパソコンを使ってRAW現像で明るさやホワイトバランスを調整できます。ホタル撮影では背面液晶で露出を確認しにくいため、RAW現像で露出を微調整したり、夜の雰囲気を出すためにホワイトバランスを調整します。
いずれにしても撮影現場で露出をホワイトバランスを決めるのは難しいので、自宅のモニタでじっくり調整できるようRAWで保存することをおすすめします。
ホタル撮影の手順2|背景のベース画像を撮影する
日が暮れてきたらホタル作品の背景となるベース画像を撮影します。
カメラを三脚にしっかり固定して、ピントをオートフォーカスで背景に合わせたら、マニュアルフォーカスに切り替えてピントが動かないようにピントリングをテープで固定します。
ピント位置は風景のポイントになる場所に合わせます。ピント位置をどこにするかわからない場合は、遠方の山や木に合わせておくとよいでしょう。
三脚とピントは撮影が終わるまで同じ位置で固定したまま撮影を続けます。うっかり三脚にぶつかって動いてしまわないよう注意しましょう。
露出モードはマニュアル露出がおすすめです。背景ベース撮影時には絞り優先でも構いませんが、この後ホタル撮影を開始する夜には必ずマニュアル露出に切り替えておいて下さい。
f値(絞り値)は原則としてホタル撮影で設定する開放F値あたりに合わせます。人によってはf8など被写界深度を深くした写真を背景ベースとされる方もいますが、背景ベースとホタルの光をコンポジットした時に不自然になるのでおすすめしません。ISO感度 400、シャッタースピードは露出に合わせて調整します。
コツとしてカメラのインジゲーターが±0を示す露出より、2、3段アンダーに撮影しておくと夜の雰囲気がよく出ます。露出を変えながら何枚かベース画像を撮影しておきましょう。
撮影後に露光量とホワイトバランスを調整するため、RAWデータ保存をおすすめします。
ホタル撮影の手順3|ホタルの光跡を連続撮影する
背景のベース画像を撮影してからしばらく待って、ホタルが飛び始めたらカメラの設定を変更します。ホタル撮影のカメラ設定は次のとおりです。
ホタルが飛び始めたら変更する設定
・ドライブモードを連写モードに切り替える
・ホワイトバランスを約3500Kに変更
・露出モードをマニュアル露出に変更
・f値(絞り値)を開放F値にする
ゲンジボタルの光跡を撮る撮影条件
f値(絞り値)2.8 / ISO感度 1600 / シャッタースピード 8秒
開放F値がF2.8より暗いレンズを使う場合は、f値(絞り値)に合わせてISO感度を上げてください。
※ 開放F値 F4 レンズの例
f値(絞り値)4 / ISO感度 3200 / シャッタースピード 8秒
※ 開放F値 F5.6 レンズの例
f値(絞り値)5.6 / ISO感度 6400 / シャッタースピード 8秒
上記の設定に変更したら、試し撮りでシャッターを切ってみましょう。黒い布で光がもれないようにして背面液晶で撮影結果を確認します。
ホタル撮影ではホタルの光跡を強調するために背景の露出は暗いほうが望ましいです。もし背景の露出が明るくなるとホタルの光が埋もれて夜の雰囲気がなくなってしまいます。
まだ日が沈みきっていない場合や、街灯が近くにある場合、街の明かりや月明かりがある場合など、上記の条件で撮影すると背景が明るくなってしまう場合は、シャッタースピードを早くします。
逆に暗闇で背景が十分に暗い場合は、ホタルの光跡が途切れないようシャッタースピードを遅くします。
シャッタースピードの目安は次のとおりです。
定常光の明るさに合わせてシャッタースピードを調整する
夕暮れ … f値(絞り値)2.8 / ISO感度 1600 / シャッタースピード 4秒
通常 … f値(絞り値)2.8 / ISO感度 1600 / シャッタースピード 8秒
暗闇 … f値(絞り値)2.8 / ISO感度 1600 / シャッタースピード 16秒
いずれにしても、絞りとISO感度を固定して、シャッタースピードで背景の明るさをコントロールします。シャッタースピードを変えると、ホタルの光跡の長さは変わりますが、光跡の明るさは変わらないことに注意してくださいね。
ヒメボタルはゲンジボタルに比べて光跡が暗いので、カメラ設定が変わります。開放F値の明るい単焦点レンズを使うことをおすすめします。
ヒメボタルの撮影条件(真っ暗な条件)
f値(絞り値)1.4 / ISO感度 3200 / シャッタースピード 20秒
背景の露出を確認できたら、レリーズをオンにしたままロックして連続撮影します。20分から30分を目安にカメラを放置しておけば大丈夫です。
ホタル撮影の手順3|RAW現像で露出とWBを調整する
撮影したRAWデータをRAW現像ソフトで開きます。今回はアドビ社のLightroom Classic CCを使用します。
背景のベース画像を開きました。現場で背面液晶を確認したときに比べて、背景が暗く感じるので露光量を+2/3EV 明るく調整しました。また夜らしい雰囲気が出るようにホワイトバランスを調整しました。
同様に、ホタルの光跡画像を開いて露光量とホワイトバランスを調整します。ホタルの光跡画像は1枚の設定をほか全ての画像にコピー&ペーストすると便利です。
撮影データをJPEG画像に書き出します。書き出しの画質は100、画像サイズは縮小せずにオリジナルサイズで出力します。
次の作業のために「背景のベース画像」と「ホタルの光跡画像」を1つのフォルダーにまとめておくと便利です。
ホタル撮影の手順4|比較明コンポジットでホタルの光跡を重ねる
Photoshop CCを開きます。[編集]-[スクリプト]-[ファイルをレイヤーとして読み込み]を選択します。
[フォルダ]を選択 ⇒ [参照]を選択 ⇒ 「背景のベース画像」と「ホタルの光跡画像」のフォルダを選択します。読み込む画像がリストで表示されるのでOKを選択します。するとJPEG画像がレイヤーでPhotoshopに読み込まれます。すべてのレイヤーを選択します。先頭のレイヤーをクリックしてから一番下のレイヤが見えるところまでスクロールバーを移動させて、[Shiftキー]を押しながら一番下のレイヤーをクリックします。
メニューから[比較明]を選択します。するとすべてのホタルの光跡が比較明コンポジットで重ね合わさった結果が表示されます。
このままだと、ホタルの光跡でゴチャゴチャしてしまいます。そこで画面に表示するホタルの光跡を絞り込んで画面を整えます。
レイヤーの左側に目玉のマークがあります。この目玉はマウスクリックでオン/オフできます。目玉がオンのレイヤーは画面に表示されて、目玉がオフのレイヤーは画面に表示されません。これで画面に表示するレイヤーを絞り込みます。
比較明コンポジットのコツは「光跡を重ねすぎない」ことです。ホタルの光跡から特徴的だったり印象的な光だけを残して、バランスよく整えるのがコツです。
先ほどの画像からホタルの光跡を間引いてスッキリさせたのがこちらです。
比較明コンポジットのもう一つのコツは「別の背景画像と組み合わせない」です。別の場所で撮影した背景のベース画像とホタルの光跡の画像を組み合わせると、違和感を感じる画像に仕上がってしまうので気を付けましょう。
ホタル撮影の構図を受講生のホタル作品でチェック
ホタル撮影のポイントはホタルの光跡にマッチする背景を選ぶことです。雑然とした草や木々を背景にするのではなく、それだけで写真として成立するくらい整った背景を選ぶようにしましょう。
この作品のように、中央に目を引くものと木々のパターンを配置して周辺を木々でトンネル構図を作ると、写真を見た人の視線が自然と誘導されます。
画面に小川を配置する時は手前から奥に奥行きを感じさせるように配置するといいですね。
古い神社やお寺のような和風の歴史を感じさせる建造物もホタルの光跡とよくマッチします。
ホタルの光跡ととてもよくマッチするのが竹林です。ホタルが飛び交う竹林のシチュエーションを見つけるのは大変ですが、もし見つけたらチャレンジしてみましょう。
まとめ|自然を撮る心構えを大切にホタルと向き合おう
比較明コンポジットを使ったホタルの撮影方法を基本から解説しました。記事ではテクニック的なことをお伝えしましたが、一番大切にしてほしいのは自然に対する敬意です。
ホタル撮影では不要な光を出さない、茂みの中に入り込み踏み荒らさないなど決められたマナーを守り、貴重な自然風景に感謝してその一部を記録させてもらう謙虚な気持ちで向き合っていただくことを願っています。
地球写真家の加藤文雄からホタル撮影を体系的に学んでみたい方は、こちらのDVD教材がオススメです。
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