桜ポートレートの撮り方|可愛く撮れる基本の3ステップを解説
「桜と人物を絡めて撮りたいけど、どう撮ればいいかわからない…」と悩んでいる方へ。
長年ポートレートを撮り続けているプロカメラマンが、桜ポートレートの撮り方をわかりやすく解説します。
桜は風景写真として魅力的な被写体ですが、人物と絡めた桜ポートレートもいろんなバリエーションで作品づくりを楽しめます。
この春は、ぜひ桜ポートレートにチャレンジしてみましょう!
Contents
人物撮影のスペシャリストが桜ポートレートを解説!
公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員
東京写真専門学校(現、東京ビジュアルアーツ)卒業
女性誌などの雑誌、出版物を中心にモデルポートレート、ファッション、ビューティーなど
女優、タレントなどの著名人の撮影多数
2019年 写真集「Jolie Jolie」を出版
桜ポートレートに必要な機材
桜ポートレート撮影に必要な機材を紹介します。
基本的にポートレート撮影と同じ機材なので、だれでもすぐにはじめられるのが魅力です。
カメラ … 入門機でもOK
カメラは一眼レフ・ミラーレス機のどちらでもOK。レンズ交換ができるカメラなら、いろんな表現方法を楽しめます。
桜ポートレートは時間をかけてじっくり撮影できるので、高速な連写機能は必要ありません。基本的な機能を備えている入門機で十分撮影できます。
ただし上級編ではストロボを使うので、カメラにストロボを接続する「ホットシュー」があるか確認してみてください。
レンズ … 標準ズームでOK、単焦点ならもっと楽しくなる
桜ポートレートでよく使う焦点距離は 35mmから135mm(フルサイズ換算)、標準から中望遠です。
カメラを買ったときについてくる標準ズームレンズなら、やや広角から中望遠をカバーしているので、これ1本あれば桜ポートレートをスタートできます。
こだわりたい方は、ぜひ単焦点レンズを用意しておきましょう。単焦点レンズは開放F値が明るいので、標準ズームレンズに比べてボケを活かして撮れます。
フルサイズ換算で、35mm、50mm、85mm、135mm の単焦点レンズを用意しておくと、いろんなシチュエーションに合わせて、表現豊かな桜ポートレートを楽しめます。
レフ板
桜ポートレートで用意しておきたいのが、レフ板です。
ポートレートは逆光、半逆光で撮るのが基本です。逆光で撮るとモデルの顔が暗くなるので、露出補正で写真の明るさを明るく調整します。
このとき、太陽の光をレフ板で反射してモデルの顔を明るくしてあげると、より自然な仕上がりになります。
レフ板は大きければ大きいほど効果を得られますが、あまり大きすぎると持ち運びが不便です。また風がふいたときに倒れやすくなります。
はじめてレフ板を購入する場合は、60cmくらいのレフ板からはじめてみて、慣れてきたら大きいレフ板を買うようにしましょう。
ストロボ
桜ポートレート(上級編)では、ストロボを使った桜ポートレートを紹介します。
ストロボを使って、自分で夜桜を演出して幻想的な桜ポートレートを撮る方法をお伝えします。
表現方法は無限大、自分だけのオリジナリティ溢れる桜ポートレートを楽しめます。
ストロボには2通りの使い方があります。カメラの上にストロボを取り付ける「クリップオンストロボ」と、カメラとストロボを離して使う「オフカメラストロボ」です。
この記事では、表現バリエーションが豊富な「オフカメラストロボ」について解説します。
オフカメラストロボに必要な機材はこちらの記事を参考にしてください。できれば、ストロボを2灯以上準備しておくことをおすすめします。
桜ポートレート(初級)|ボケを入れてバストアップで撮る
はじめて桜ポートレートを撮る初心者の方におすすめの撮影方法です。
カメラとレンズの選び方とおすすめ設定
使用するレンズは標準から中望遠、フルサイズ換算で50mmから100mmがおすすめ。画角が狭めなので、周りの余計なものが入りにくくなるので、撮りやすい焦点距離です。
カメラ設定は絞り優先で、絞り値は開放にして背景のボケを活かします。露出補正をプラスにすると、明るく可愛らしい雰囲気で撮れます。
ピントを合わせる位置はモデルの目です、これもポートレート撮影の基本です。瞳AFがあるカメラなら便利な機能を積極的に使ってみましょう。瞳AFがない場合は、AF測距点をモデルの目に合わせて、親指AFを使うのが便利です。
構図の選び方
構図はモデルをバランス良く切り取れるバストアップが基本です。バストアップはポートレート撮影の基本中の基本です。桜ポートレートだけでなく、いろんなシチュエーションで使える構図なので覚えておくといいですね。バストアップはモデルの胸から頭の上までを切り取ります。このときモデルの頭の上に少し空間を空けるとバランス良くまとめられます。
逆光で撮る
桜の配置によりますが、光の条件は逆光がおすすめです。ふんわりした桜の雰囲気を表現して、優しく可愛らしい桜ポートレートを撮れます。
背景は桜の花が密集している場所を選びます。できれば桜の花がモデルの腰辺りの低い位置にあると撮りやすいですね。あるいはモデルに対してやや低い位置から、遠方にある桜を背景にして撮ってもよいでしょう。
モデルに色んなポーズをとってもらって、多彩な桜ポートレートを楽しんでみましょう。桜にそっと触れているようなポーズもキレイですね。衣装も桜の花に合う服を選ぶと、世界観をより表現できます。
アクセントを加えたい場合や、背景の桜が少なくて寂しい場合は、レンズの近くに桜の花を近づけて、前ボケを作るのがおすすめです。
桜の花がレンズに当たるか当たらないかまで近づけると、ふんわり桜色の桜フィルターを作れます。
桜ポートレート(中級)|周りの桜風景を入れて撮る
バストアップの桜ポートレートが撮れるようになったら、周りの情景を入れながら全身ポートレートにチャレンジしてみましょう。
使用するレンズは35mmから50mm(フルサイズ換算)の標準画角が便利です。
中望遠で撮ったバストアップに比べて、背景の範囲が広くなるので、邪魔なものが写り込む可能性があります。
通行人、看板、カラーコーンなどは、小さくてもとても目立つので、できる限り画面に入れないようにしましょう。どうしても避けられない場合は、レタッチで消してしまうのも方法です。
全身のポートレートは、バストアップに比べて背景の選び方が難しくなります。ときには、良い場所がない!こともあるでしょう。そうしたケースでも対応できる、おすすめの撮影方法を紹介します。
少し高い場所に立ってもらう
例えばこちらの作品、バストアップで狙っても十分キレイですが、モデルさんに縁石の上に立ってもらうことで全身を可愛く見せつつ周りの雰囲気を表現しています。このように、モデルに少し高い場所に立ってもらうのは、周りの情景を見せられる方法です。
ローアングルで撮る
桜が高い場所にあって、地面が絵になるならローアングルもおすすめです。こちらの作例では緑の土手をうまく使っています。桜の枝が高い場所にあるので、ローアングルで見上げるように撮っています。土手が緑に覆われているので、桜のピンクと緑のコントラストがキレイですね。
また手前に白い花の前ボケを入れて、単調になりがちな空間をうまく埋めています。
ポートレートをローアンルグで撮ると、足が長く見える効果があります。一方で、モデルに近づきすぎると不自然な形になってしまうので、ほどよい距離を保ちながらアングルを探りましょう。
落ちている桜と撮る
桜がピークを過ぎていたり、ちょうどよい高さの枝が見つからない場合、地面に落ちている桜に注目してみましょう。
この作例では落ちいている桜と、差し込む光、枝の影を意識して背景を演出しています。地面に落ちている桜は単調になりがちですが、このように光を意識して観ることで、変化を加えられます。
プラスαを絡めて撮る
同様に桜のピークを過ぎていても、プラスαを絡めることで、桜でさりげなく春を演出できます。
こちらの作例では、鉄道の車両を絡めています。鉄道とモデルに視線が集中するので、桜の花はピークを過ぎて葉っぱが見えていますがそれほど気になりません。むしろ、通常の鉄道ポートレートと違い、春の季節を感じられます。
そのままでも作品として成立しますが、手前の菜の花が画面全体を占めるアクセントカラーになっていますね。
桜吹雪と撮る
桜が散り始めて、ほどよく風がある場合は桜吹雪を狙ってみるのがおすすめです。
こちらの作例では、背景の桜を見ると緑の葉っぱがところどころ見えているので、これだけで背景を成立させるのは厳しそうです。そこで、手前に桜吹雪を配置して、背景の桜より手前のボケた花びらに視線をもってくるように演出しました。
もし桜吹雪が狙った場所に来ない場合は、落ちている花びらを使って、レンズの前に散らしてみると、よいショットを撮れる可能性が高まります。
桜ポートレート(上級)|ストロボで幻想的に演出する
桜ポートレートは夜が本番です!花見客がいなくなった公園など、通行人を気にせずに、じっくりと演出を楽しめます。ただし、桜の季節は夜の冷え込みが強いので、十分に温かい服装で出かけましょう。
カメラとストロボの基本設定
まず、桜ポートレートではストロボをカメラから離して使うオフカメラストロボが基本です。ストロボをカメラの上に取り付けるクリップオンストロボでは十分な演出効果が得られません。
ストロボの数は最低2灯、できれば3灯以上がおすすめです。1灯でモデルを明るく照らし、他のストロボで背景の桜を照らします。ストロボの数が少ないと、背景の桜が寂しくなってしまうので、ストロボの数も多いほうがいいですね。
カメラ設定はマニュアル露出です。絞り値はf2.8から5.6の開放、シャッタースピードは同調速度の範囲でブレが起こりにくい1/60~1/125がおすすめです、ISO感度は100で試してみて、ストロボの発光量が足りないようならISO400に上げてみましょう。
ストロボの発光量もTTLではなくマニュアルで調整します。背面液晶で確認しながら発光量を調整しましょう。実際には1/4~フル発光の範囲で使用することが多いですね。
ストロボの光を直接モデルに当てると、強い影がでて不自然になるので、傘バウンスあるいはソフトボックスを使って光を柔らかくすると自然に撮れます。
モデルに当てるストロボ光の基本を知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。
桜を照らすストロボは、奥から手前方向に照射して桜の花に透過光を当てるとキレイに写ります。桜のように光が透ける素材は、ストロボの光を透過光として当てるのがおすすめです。
演出の工夫として、モデルの背後から直接モデルに向けてストロボの光を当てるのがおすすめです。リムライトといってモデルのリム(縁)を光で演出する方法です。
ストロボ設定は意外とカンタンです。モデルの背後にストロボを配置して、モデルに向けて1/2またはフル発光で強い光を当てます。このときカメラからストロボが見えないように、モデルの立ち位置かストロボの配置を考えておきます。
すると作例のように、モデルをリムライトで演出した桜ポートレートが撮れます。
リムライトは顔だけでなく全身も演出できます。この作例では雨が降っていたので、雨粒が背後のストロボに照らされて、モデルの周囲で輝く様子が撮れました。
ストロボの数が多ければ多いほど、自由に桜をライトアップできます。こちらの作例では、ストロボを5~6灯使って背景の桜を広い範囲で照らして撮りました。証明がないと真っ暗なシチュエーションですが、ストロボのおかげで面白い演出効果が得られます。
桜ポートレート(番外編)|周りの人を絡めて撮る
「桜ポートレートを撮ってみたいけど、モデルと一緒に撮るのはハードルが高い…」と感じている方へ、オススメなのが周りの人を絡めて桜を撮る方法です。
最近は被写体の肖像権が問題になりやすいので、人物を入れて撮るときは後ろ姿やシルエットなど、個人が特定できない範囲で撮るようにしましょう。
周りの人を絡める桜ポートレートは、映り込む人物の姿かたちで写真の印象が決まります。
モデル撮影と違って、通りがかりの人は思ったようによいポーズをしてくれません。もし、いいポーズを見つけたらすかさず撮るか、あるいはよい人物がよい位置に通りかかるまでじっくりと待つ姿勢で望みましょう。
人物の顔が写らないのなら、肖像権はかなり問題がなくなるので、体の一部を使う撮り方もおすすめです。
桜ポートレートのまとめ
このように、桜は風景写真として撮るのも楽しいですが、桜ポートレートも写真の楽しさが広がります。
まずは定番のバストアップで慣れてから、全身を入れて撮ってみる、夜になったらストロボの演出を試してみると、一日中撮影を楽しめますよ。
今年の桜シーズンは、ぜひ桜ポートレートにチャレンジしてみましょう。