クリップオンストロボ・フラッシュのおすすめ機種をプロが解説します
ストロボをはじめてみたいけど「何を買えばいいかわからない…」方のために、プロカメラマンがクリップオンストロボの選び方とおすすめ機種を紹介します。
クリップオンストロボを使うことでいままで撮れなかった、驚くような写真を撮れるようになりますよ!
クリップオンストロボの選び方(発光量/首振り/TTL有無)
クリップオンストロボはカメラメーカーをはじめ、サードパーティー製など様々な機種が発売されています。初めてストロボを選ぶ方から見ると、何を買えばいいかわからなくなってしまいますね。
まずクリップオンストロボを選ぶときに見るべきポイント、発光量/首振り/TTL有無について解説します。
クリップオンストロボの選び方1|大光量は正義!
クリップオンストロボ選びの最初のポイントは「発光量」です。ストロボは閃光を照射して被写体を明るく照らす道具です。失敗しないストロボ選びのコツは、大事な能力である「発光量」を最初にチェックするのがポイントです。
光量を選ぶポイントは、「大光量は正義」という考え方です。
ストロボにはその機種が発光できる発光量が決まっています。安価なモデルに比べて高価なモデルはずっと多くの光を被写体に届けることができます。
クリップオンストロボを使うシチュエーションによって、ストボロに求められる発光量は異なります。
自宅のテーブルフォトのように小さな範囲であれば小型のストロボでも十分かもしれません。しかし数十人規模の集合写真や、人物撮影で逆光で暗くなった顔を明るく撮る場合など、ストボロの発光量が小さいと光量不足のためにストロボを使う意味がなくなってしまうケースがあります。
あらかじめ大光量のストロボを用意しておけば、大光量のストロボを強く光らせたり弱く光らせることで、いろんなシチュエーションに対応できます。それだけストロボを活用できる範囲が広がると言えますね。
また、クリップオンストロボにはチャージ時間(次の発光までの待機時間)があります。チャージ時間はストロボの最大発光(フル発光)の後が最も長く、ストロボの発光量を弱めて撮るとチャージ時間が短くなります。
つまり、発光量の小さいストロボをフル発光で使うより、大光量のストロボの発光量を弱めて使うほうが、チャージ時間は短くなります。
写真撮影は1枚撮っておしまいではなく、何枚も連続してシャッターを押しますよね。チャージ時間は長いときは数秒かかることがあります。人物撮影のようにテンポが大切な撮影では長いチャージ時間は撮影の支障になってしまいます。
このように、クリップオンストロボの活用範囲、チャージ時間という使い勝手を考えると、クリップオンストロボは大光量が正義!というのが理解できると思います。ただしクリップオンストロボは光量が大きくなるほど高価で重たくなるので悩ましいところですね。
機種選びで迷うならフラグシップの大光量モデル。携帯性も考慮するなら、そのひとつ下のモデルを選ぶと失敗が少なくなります。
クリップオンストロボの発光量はガイドナンバーという数字で表されています。このガイドナンバー、一応定義はあるのですが非常に古いカメラシステムを前提とした数値でそれ自体あまり意味を持たなくなりました。したがってガイドナンバーの数字はあくまでも目安として、数字が大きいほど発光量の大きいストロボである、とだけ覚えておくと良いですね。
クリップオンストロボの選び方2|首を振れないやつは使えない
首振りとはストロボの光を当てる角度(照射角度)を変えることです。ちょうどクリップオンストロボの首の部分に当たるので、首振りと言ったりしますね。
なぜ首振りが大事かというと、クリップオンストロボを使いこなす上で、光を当てる角度(照射角度)がとても大切だからです。ストロボの使い方を紹介する記事で「天井バウンス」というキーワードが出てきますので注目してくださいね。
例えばこちらの2枚の写真、ストロボの光を当てる角度を変えて撮った写真です。左は首振りをせずに撮った写真、右はストロボを天井に向けて天井に反射した光を当てて撮った写真です。全然見た目が違いますね。
クリップオンストロボを直接当てた写真は顔が白っぽくなって背景に強い影が出ています。せっかくクリップオンストロボを使ったにもかかわらず、いかにも初心者が撮りました!という写真に見えてしまいます。
クリップオンストロボを天井に向けて撮った写真は自然に明るく人物を撮れていますね。これならストロボを使った意味を実感できますね。
この違いこそ、カメラの内蔵ストロボを使わずに、わざわざクリップオンストロボを使う理由の一つです。首振りができないクリップオンストロボは使えない!ことがわかりますね。
各メーカーのストロボのラインナップを見ると、安価で発光量の小さいストロボは首振りができないものが多く、大光量のストロボは首振りができるものが揃っています。したがって、前に解説した光量が十分にあるクリップオンストロボを選べば大丈夫ですよ。
クリップオンストロボの選び方3|初心者はTTL有りが安心
クリップオンストロボ選びの3つ目のポイントはTTLオートの有り無しです。TTLとは Though The Lens の頭文字をとったもので、被写体に当たっているストロボの光をレンズを通してリアルタイムで測定することで、その方式でストロボの発光量をオート調整する仕組みがTTLオート付きストロボです。
要は、ストロボのオート機能と考えておくとよいでしょう。
クリップオンストロボの使い方は2通りあります。TTLを使ってストロボの発光量をカメラ任せにする方法(オート)と、TTLを使わずにストロボの発光量を自分で調整する方法(マニュアル)です。
初めてストロボを使うときや、パーティー会場のスナップ撮影など条件がコロコロ変化するときはTTLを使ったオート機能が便利です。はじめてクリップオンストロボを購入するときは、できる限りTTL機能がある機種を選んだほうが失敗が少ないのでおすすめです。
中上級者の場合、日中シンクロなど背景の光とストロボの光のバランスを調整したり、複数のストロボを同時に使った撮影を行うことがあります。この場合、TTLオートではなくマニュアルでストロボの発光量を自分で調整します。
各メーカーの上位モデルはほとんどTTL機能が備わっているので、クリップオンストロボ選びでは一応確認する程度で大丈夫です。
クリップオンストロボのおすすめ機種を紹介します
クリップオンストロボの選び方がわかったところで、初心者におすすめのクリップオンストロボを紹介します。
ここで紹介するストロボは、選び方でおすすめした次の条件を満たしています。
(1)大光量
(2)首を振れる
(3)TTL有り
クリップオンストロボはメーカー純正が安心
クリップオンストロボ選びの方針として、「メーカー純正」と「サードパーティー製」のどちらを選ぶか?という選択肢があります。
メーカー純正のメリットは安心したサポートが受けられること、デメリットはやや高価なことです。サードパーティー製のメリットは価格です、メーカー純正に比べて1/2か1/3の価格で購入できます。サードパーティーとしては国内メーカーのニッシンをはじめ、最近は海外のメーカーが進出しています。
ウェブで通販サイトを眺めていると、サードパーティー製、とくに海外製のクリップオンストロボにはびっくりするくらい安価なストロボもあります。つい購入したくなりますが、初心者が最初に購入するクリップオンストロボは少し値段が張ってもメーカー純正をおすすめします。
理由として「安全性」「正確性」の2点が挙げられます。
「安全性」について、クリップオンストロボは一時的に貯めた電気を一気に使って、大電流で強い閃光を発生させる機械です。大電流を使う機械は爆発や発火など危険が伴います。実際にネットで購入した海外製(中国製)のクリップオンストロボは、電気関係の故障の話も耳に届いています。
クリップオンストロボはカメラに取り付けて顔の近くで使う道具です。万が一のことを考えると、少し高価でもカメラメーカーが安全を保証しているものを購入することをおすすめします。
「正確性」とはさきほどのTTL機能について。TTL機能はクリップオンストロボが光る一瞬の間に、カメラが測定した被写体の明るさをストロボに伝えてストロボが発光量を調整します。当然、カメラとストロボの通信が安定していることが前提です。
サードパーティー製のストロボは独自にカメラの動作を解析して作られています。もし大事なシャッターチャンスでTTL機能がうまく働かずに、ストロボが全く調整できない、という可能性がないわけではありません。
「そんなの気にせずに、安けりゃいいじゃん!」という考え方もありますが、本サイトはプロカメラマン監修のもと、正確な情報をお伝えする方針で運営しています。したがって「安全性」「正確性」の理由で、初心者が最初に購入するストロボはメーカー純正をおすすめします。
クリップオンストロボをカメラから離すオフカメラ(ワイヤレス発光)や多灯ライティングなど高度なストロボ撮影にチャレンジする場合、また選び方の方針が異なるので、そちらの記事をご覧くださいね。
Nikon ニコン クリップオンストロボ
ニコンのクリップオンストロボは「スピードライト」と呼ばれています。ニコンの純正クリップオンストロボはいくつかラインナップが揃っています。迷ったら最上位の「SB-5000」か「SB-700」がおすすめです。
携帯性を考えるなら、発光量と重量のバランスがとれた「SB-500」がおすすめです。
Canon キヤノン クリップオンストロボ
キヤノンのクリップオンストロボは「スピードライト」と呼ばれています。キヤノンもニコンと同様にラインナップが揃っているので、迷ったら最上位の「600EX II-RT」携帯性を重視するなら「430EX III-RT」を選ぶと間違いがないですね。
発光量は少し落ちますが、軽量で価格も抑えられた使い勝手の良いクリップオンストロボです。
Sony ソニー クリップオンストロボ
ソニーのクリップオンストロボはシンプルに「フラッシュ」と呼ばれています。ソニーもラインナップが揃っているので、迷ったら最上位の「HVL-F60RM」携帯性を重視するなら「HVL-F45RM」を選ぶと間違いがないですね。またストロボにLEDライトが備わっているので、ちょっとしたライティングならカンタンに済ませることができますよ。
Pentax ペンタックス クリップオンストロボ
ペンタックスリコーのクリップオンストロボは「オートフラッシュ」と呼ばれています。最上位の「AF540FGZ II」は防塵防滴仕様で万が一雨などで濡れそうになっても安心できます。LEDライトが備わっているので、動画撮影やちょっとしたライティングもカンタンに行えます。
Panasonic パナソニック クリップオンストロボ
パナソニックのクリップオンストロボは「フラッシュライト」と呼ばれています。最上位の「DMW-FL580L」、携帯性を重視した「DMW-FL360L」がおすすめです。LEDライトが備わっているので、動画撮影やちょっとしたライティングもカンタンに行えます。
Olympus オリンパス クリップオンストロボ
オリンパスのクリップオンストロボは「エレクトロニックフラッシュ」と呼ばれています。最上位の「FL-900R」は防塵防滴仕様なので水に濡れそうなシチュエーションでも安心して使えます。新しい「FL-700WR」は「FL-900R」より発光量は少なくなりますが、いろいろ使える機能が豊富です。
オリンパスのクリップオンストロボの面白いところは、ハイレゾショットや深度合成といった一度に何枚も撮影して合成する手法に合わせて、ストロボが連動して発光してくれるところですね。
まとめ
はじめてクリップオンストロボを購入する初心者の方におすすめしたい、選び方のポイントは次の4つです。
(1)大光量
(2)首を振れる
(3)TTL有り
ストロボは買ったらお終いではなく、使い方を工夫することで無限の表現力を引き出すことができます。ぜひこちらの記事でクリップオンストロボの基本の使い方をチェックしてくださいね。