広角レンズの特徴をマスターして表現力がアップする5ステップ練習法
広角レンズを使っているけど「広い範囲を撮っただけ」の写真になっていませんか?
広角レンズは広い画角と強烈なパースを活かせるレンズですが、レンズの個性に負けて失敗写真を量産する初心者が多いのも事実です。
ここでは広角レンズ初心者がやりがちな失敗例と、対策方法、広角レンズ使いこなしのコツを解説します。
広角レンズの特徴と使いこなしをしっかり覚えて、他の人には撮れないダイナミックな写真表現を楽しみましょう。
広角レンズの3つの特徴を活かすことが使いこなしのポイント
広角レンズでも望遠レンズでも、交換レンズを使いこなして思い通りの写真を撮るには、レンズの特徴を活かした撮り方で撮ることが必要です。
交換レンズの基準(スタンダード)といえば、標準レンズです。標準レンズは人の見た目に近い自然な画角と遠近感で写真を撮ることができます。
広角レンズは、標準レンズにはない特徴を3つ持っています。1つ1つ見ていきましょう。
広角レンズの焦点距離について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
広角レンズの特徴1|画角が広い … 広い範囲を撮れる
まず広い範囲を撮れることですね。広角レンズを使えば目の前に広がる風景をほぼすべて写真に収めることができます。アメリカのグランドキャニオンのように広大な景色を撮りたいとか、小さな部屋で被写体との距離を十分確保できない場合などに活躍します。
参考までに、人間の眼は120°程度の画角を持っています、これはフルサイズ換算で12mmの超広角レンズと同等です。
画角の広さを実感するために、カメラを構えずに目の前の風景を見て、どこまで画面に収まるかイメージしてみて下さい。次に、実際にレンズの焦点距離を合わせて、ファインダーを覗いてみて下さい。目で見た風景のどこからどこまで写真に収められるのかを知ることが第一歩です。
また画角が広いということは、同じ大きさで主役を撮ったときに、より背景が広く写せます。例えばこちらの作例は、同じ被写体を同じ大きさで写るようにカメラとの距離を変えて撮り比べたものです。
人の見た目に近い標準レンズと比べて、背景がより広く写っていることがわかります。このように、広角レンズは背景の情報をより多く含めて撮りたいときにも便利です。
広角レンズの特徴2|誇張(パース) … ダイナミックな表現ができる
広角レンズを使いこなす上で、最大の特徴と言っていいのが誇張です。
誇張とは、本来の見た目に対して見せたいポイントを強調して表現することです。広角レンズで何が強調されるかというと、遠近感が誇張されます。もう少し平たく言うと、「近いものはより近く、遠いものはより遠く」に歪んで誇張されます。
広角レンズで撮ると、手前の花がより大きく、奥のビルは実際より小さく誇張されて歪んで写ることがわかります。
この歪はパースとも呼ばれます。パースは画面のどこか1点に向って収束する特徴があります。また画面の端に配置したものほど大きく収束します。
この誇張(パース)を上手く使うと、奥行き感を感じさせる写真を撮れたり、見せたいものを手前に大きく配置して広い背景と組み合わせたような写真を撮ることができます。
この誇張(パース)の効果をより活かすには「被写体により近づく」あるいは「低い位置から撮る」方法がおすすめです。
ファンダーを覗く前に「広角レンズでこのアングルから撮れば、このように誇張されるはず」と、イメージを作ってからカメラを構えるとよいですね。
広角レンズの特徴3|被写界深度が深い … 手前から奥までピントが合う
広角レンズの特徴3つ目は、被写界深度が深く手前から奥までピントが合わせやすいことです。パンフォーカスの記事でも解説しましたが、被写界深度(=ピントが合ったように見える範囲)は広角レンズの方が深くなります。
風景写真は画面の隅々までピシッとピントを合わせると力強さが増します。広角レンズの特徴である、画面の広さ+誇張+被写界深度の深さを組み合わせることで、よりダイナミックで迫力のある風景写真を撮れるようになりますよ。
風景写真だけではなく、テーブルフォトなど近くの被写体で被写界深度を深くしてパンフォーカスを得たいときにも使えます。そのまま広角レンズで撮ると画面の端が無駄だったり誇張(パース)の歪が目立つので、中央部分だけをトリミングするとよいですね。
広角レンズでやってしまいがちな失敗例
さて、ここから広角レンズ使いこなしのテクニックを紹介していきます。その前に、広角レンズでやってしまいがちな失敗例を紹介します。心当たりのある方は注意して撮影してくださいね。
広角レンズの失敗例1|余計なもの(人工物、人、枝、無駄な空間)が写っている
広角レンズは広い範囲を写せる面白さがありますが、一方で余計なものが写り込みやすいという危険があります。
写真の構図の基本は引き算です。主題と関係ないものを徹底的に省くことで、何を撮りたかったのか?わかりやすい写真になります。広角レンズを使うときは、必要以上に画面の隅々まで気を配って余計なもの、無駄な空間が写っていないか確認するようにしましょう。
広角レンズの失敗例2|レンズフードが写りこんでいる
レンズフードはレンズに直射日光が射し込むことで起こるゴーストやフレアを防ぐために装着します。広角レンズ用のレンズフードは花型フードと呼ばれる形状ですが、実はレンズに取り付ける向きがあります。
花形フードの出っ張った部分を上下に、引っ込んだ部分を左右に取り付けます。もし逆に取り付けてしまうと、目一杯広角に引いたときに、出っ張った部分が写真に写り込んでしまいます。
またフードはレンズの先に回転させて取り付けますが、カチッと音がするまでしっかり回し込まないといけません。中途半端な状態だと、一見フードがついているように見えますが、写真を撮ると画面の端にフードの影が写ります。注意してくださいね。
広角レンズを使い始めたことは、思った以上の範囲が写ることに驚くと思います。やってしまいがちなのが、自分の手足が写ってしまうことです。カメラを構えたらファインダーの隅々までよく確認して、余計なものが入っていないか確認しておきましょう。
広角レンズの失敗例3|不自然に歪んでいる
誇張(パース)は広角レンズの大事な特徴ですが、必要以上に被写体が歪んで不自然さを感じさせてしまうと失敗です。例えば集合写真にありがちですが、画面の端に人物の顔を配置したときに横方向に歪んでしまうことが挙げられますね。
広角レンズマスターへの第一歩|おすすめ練習法
Step1|まずは標準レンズの広角側を使ってみよう
広角レンズのラインナップを見ると、様々な焦点距離のレンズがあることがわかります。フルサイズ換算で14mmといった超広角レンズなんか、どんな写りをするんだろう?と気になりますよね。
しかし最初から焦点距離の短い超広角レンズを使ってしまうと、画面の広さに圧倒されて、レンズの特徴を理解する前にレンズに遊ばれてしまいがちです。
そこで、まずは広角レンズの入り口であるフルサイズ換算で24mmまたは28mm(APS-Cなら15mm、18mm)からスタートしてみましょう。カメラを買ったときについてきた、キットレンズ標準ズームで大丈夫です。
Step2|街角スナップから始めてみよう
いきなり風景写真を撮りに行ってもよいのですが、広角レンズの画角と誇張(パース)に慣れるために、身近な街歩きから始めてみましょう。街を歩いて目についた「面白いもの、気になったもの」を発見したら、いつもより一歩近づいて撮ってみましょう。被写体に一歩近づくことが広角レンズの特徴を活かすポイントです。
Step3|背景に気をつけて余計なものが写り込まないように
広角レンズの広い画角の影響で、背景にたくさんのものが写っていると思います。通行人や人工物など、余計なものを徹底的に画面から追い出しましょう。見せたいものだけをシンプルに写すこと、単純なようですが意外と難しいのでぜひトライしてみて下さい。
Step4|カメラポジションを変えてみよう
背景をシンプルにすることができたら、アングルつまりカメラの位置を変えてみましょう。普段撮っているカメラの高さだけでなく、しゃがみこんでローアングルで撮ってみると広角レンズの誇張(パース)を活かした写真を撮ることができます。広角レンズはアングルを変えると全然違う世界が見えてきますよ。
また、上を見上げて空を大きく入れた構図も面白いですね。手前にポイントとなる被写体を大きく入れるといいですよ。
Step5|足し算構図に挑戦しよう
構図の解説で、写真の構図は引き算とお伝えしました。伝えたいモノ以外を画面から徹底的に省くことで、写真を観た人に「何を撮りたかったのか」が伝わる写真を撮ることができます。引き算を意識することは写真上達の第一歩です。一方で、引き算に慣れてくると、シンプルなだけの写真に飽きてきます。そこで、写真にひと味を添えるアクセントを加えるのが足し算構図です。
といっても、なんでもかんでも写真に入れてしまうと、広角レンズの失敗例のように余計なものが入った写真と見られてしまいます。大事なことは、主題や撮りたいイメージに合ったものを選りすぐって画面に入れることです。最初は難しいと思いますが、足し算構図ができると写真の面白さが大きく広がります。プロカメラマンの作品は、そのほとんどが足し算構図でできています
広角レンズは画角が広いので、足し算構図に向いたレンズです。ある程度、広角レンズに慣れてきたら、ぜひ足し算構図に挑戦してみてくださいね。
広角レンズは寝転んで撮ると、非日常の世界を表現することもできますよ。こちらの記事も参考にしてくださいね。