【おすすめ写真集】プロ写真家の人生を変えた珠玉の7冊を紹介します | 一眼レフの教科書| 写真教室フォトアドバイス【公式】
  1. TOP
  2. 初心者|一眼レフの基本
  3. おすすめ写真集
  4. 【おすすめ写真集】プロ写真家の人生を変えた珠玉の7冊を紹介します

【おすすめ写真集】プロ写真家の人生を変えた珠玉の7冊を紹介します

 2019/05/28 おすすめ写真集   21,247 Views

写真を撮っていると「写真ってなんだろう?」と感じるときがあります。そんな疑問を感じたときは、ぜひ写真集を手にしてみましょう。

本屋の写真集コーナーを見ると、いろんな写真集が出ています。それらの写真集には、優れた撮影技術、被写体に向き合う姿勢、写真とはなにか?と考え続けた答えが込められています。そうした写真集を眺めていると、写真を撮るうえで大切なことに気付かせてくれます。

この記事では、膨大な写真集を見てきたプロ写真家が、とくに感銘を受けて人生に大きな影響を与えた珠玉の7冊を紹介します。

写真集を紹介してくれる写真家

写真家 五海ゆうじ

1947年島根県出雲市生まれ。東京綜合写真専門学校で写真を学ぶ。1973年崔洋一、篠毅、ヒロヤマガタと4名で「JIM」設立。以後、広告、映画、雑誌などの写真を主に活動を始める。2005年、花と植物の写真集「Flowers of Romance」でエプソン賞受賞。写真展を多数開催。著作に写真集「自由の意思」、「NATURE TALKS」などある。NPO法人「ジャパンミュージックサポート協議会」を設立し、2013年 写真集「阿部薫OUT TO LUNCH」出版、写真展「阿部薫12葉の写真+2」開催。2017年 写真集「FLOWERS OF ROMANCE」を出版。 2014年からインターネットを使った写真講座で花撮影の指導を行う。日本全国と海外を含め花撮影の指導人数はのべ1000人を超える。

『The Americans(ザ・アメリカンズ)』(ロバート・フランク)

学生だった私に写真の撮り方を教えてくれたのが、この一冊です。

当時、アメリカを捉えた優れた写真家は数多くいました。たとえば、ダイアン・アーバス。ウォーカー・エヴァンス。リチャード・アヴェドン。彼らはアメリカ人であり、アメリカ人としてアメリカを撮影しました。

一方のロバート・フランクはスイス生まれ。23歳のときに単身で渡米してきた異邦人でした。

さらに、ロバートは手法の点でも異端児だったといえましょう。当時は劇的なものを被写体として撮る手法が一般的でしたが、ロバートが撮ったのはアメリカを旅する中で出会った人々の何気ない生活の中のワンシーンだったのです。

ロバートは、1955年から2年にわたって、高度成長期のアメリカ各地を撮影しました。その写真のどれもが、みごとにアメリカらしさを浮き上がらせていました。

だからこそ今、半世紀の時を経てもなお鮮やかに私たちの前に存在している。それが、この『ザ・アメリカンズ』。なんでもない日常を撮り続けることの大切さを教えてくれる写真集です。

『Other Americas(アザー・アメリカ)』(セバスチャン・サルガド)

ありふれた日常を切り取ったのがロバート・フランクなら、セバスチャン・サルガドは劇的なものを撮影した人でした。

ブラジルに生まれ、多くの賞を受賞してきた報道写真家です。まさに、世界で最も説得力のある写真家の一人といえるでしょう。

サハラ砂漠に暮らす人々の飢えの現状を捉えた『Sahel(サハラ)』、6年かけて世界26カ国の労働者を追った『Workers(ワーカーズ)』、2004年から2011年まで世界の旅を通じて地球の起源を辿った『GENESIS(ジェネシス)』といった写真集が有名です。

そんな彼のデビュー作は、1977年から1984年にかけてのブラジルやメキシコといったラテンアメリカの風景を収めた『アザー・アメリカ』。

ブラジル出身である彼がインディオを撮り歩いた写真の中には、日常の中に人のもつ尊厳、生活の中に滲みでる人間らしい姿が捉えられています。

その中に、私の脳裏に焼きついて離れない一枚があります。

インディオの家族が、村祭りにいく写真です。写っているのは後ろ姿で、顔はわかりません。家長である男性が我が子と手をつなぎ、妻が彼の腕を抱えています。彼は、ボロボロのスーツを着て、家族をエスコートして村祭りにきたのです。

この一枚を見たとき、「こんなに美しいスーツ姿は見たことがない」と感じました。そこには、生きていることのすばらしさが詰まっていました。写真は、捉えられるのです。スーツひとつ撮るだけでも、人にとって大切なものを、愛を、こんなにも豊かに。

『アザー・アメリカ』は、巨匠・サルガドが、人をどう見つめていたか。そのまなざしをありありと語る、彼の原点と言える作品です。この一冊は、写真のもつ偉大な力を私に教えてくれました。

『幼年の「時間(とき)」』(牛腸 茂雄)

ページをひらいた瞬間、どうしようもなく涙があふれて、止まりませんでした。

牛腸(ごちょう)は、私と同世代の写真家です。体が悪く、36歳の若さで亡くなりました。

没後、12年が経とうという時に、たまたま書店で『幼年の「時間(とき)」』を見つけました。ページをめくると、そこには、自分の身近にいる子から、町で遊んでいる子まで、たくさんの子どもたちの姿が収められていました。

それを見たとき、生前の牛腸が捉えようとしたものが伝わってきて、たまらなくなってしまったのです。彼は小さい頃に病気を患い、障害を持ちました。

写っているのは、自分は持ち得なかった健康に恵まれた子どもたち。かわいいということを超えた、健やかな笑顔。はじけるような生命力。ゆるぎない存在感ーー。

それらが、透きとおるように無垢な眼差しで、美しく捉えられていたのです。まさに、彼にしかできない表現でした。

牛腸と私は、大辻清司先生のところに出入りする仲間同士だったという特別な関係です。それでも、透明な視点で子どもたちを捉えきったこの写真集のもたらす力は、きっと皆さんにも伝わるはずです。

『ニッチ東京』(高梨 豊)

仕事のかたわら、街に出てスナップ写真を撮ることがあります。

街角にはいろんなドラマが潜んでいます。今回、たくさんの写真集を改めて見返しながら考えていたのは、「私に最も大きな影響を与えてくれた写真家は誰だろう?」ということでした。

間違いなくそのうちの一人だと思ったのは、高梨 豊です。日常を撮ることで、今生きている世界の面白さ、人の奥深さを浮き彫りにしてきた写真家です。

彼のデビュー作は、1965年、カメラ毎日に掲載された『東京人』。

初めて彼の写真を見たとき、私は理解できませんでした。この写真の何が面白いんだろう、と。でも、ある日、突然理解できる瞬間がやってきたのです。それ以来、私が歩む先、目の前にはずっと高梨がいました。

2015年、高梨は『ニッチ東京』という写真集を出版しました。

1万円近い価格で、決して安いものではありませんが、迷わずに買いました。やっぱり高梨豊は面白い! なんでもない風景の中に、東京や横浜での私たちがどんな存在として街を歩いているかが、非常にうまく、克明に記録されています。

日常を捉えようとしたとき、こんな撮り方があるのだ。視点を定めて撮ると、こんなにも生き生きと世界や人を切り取ることができるのだ。そんなことを教えてくれる一冊でした。

『Documentary(ドキュメンタリー)』(中平卓馬)

高梨豊の同世代の写真家に、2015年に亡くなった中平卓馬がいます。

彼は、日本写真の世界ではとても有名な同人誌『PROVOKE(プロヴォーク)』にも参加しており、非常に卓越した理論家でした。

しかし、酒と薬に溺れて、急性アルコール中毒で記憶喪失になってしまいます。ようやく体力や記憶が回復した1983年、『新たなる凝視』という写真集を出しました。その時、彼は「写真を撮ることは自分が生きていることの証明だ」と語っています。

亡くなる4年前に出た写真集が『ドキュメンタリー』です。ものを見る、見つめる、凝視していく。そうして撮られた写真がどれだけの力を持ちうるか、まざまざと感じさせてくれる写真集なのです。

街を歩いて、面白いと思うものを見つけ、ピントを絞って、克明に描写する。「ものを、あるがままに、きちんと撮る」ということが、どれだけの力をもって人に訴えかけるか。あるがままのものを撮るということが、どれだけすばらしく、どれだけ力強いことか。

『ドキュメンタリー』の帯に、写真家・森山大道がこんな言葉を寄せていますーー「彼は写真の聖域に到達した、ただ一人の写真家である」。

あるがままにきちんと撮ることを続けることで、一つの到達点にたどりつく。森山はそれを「聖域」と呼びました。中平は『新たなる凝視』を上梓した時から、被写体をありのままに撮ることに徹し始めたように思います。

写真とはなんだろう? 何を撮ればいいのだろう?

ここに、その答えがあります。もしかしたら、ある人にとっては理解しがたいものかもしれません。でも写真を撮り続けていけば、感じとれるものがきっとあるはずです。

ドキュメンタリーとしてきちんと撮るという“基本”が、どれだけの力を持つかを私に教えてくれた写真集です。

『おきて』(岩合 光昭)

岩合 光昭といえば、ネコの写真で有名ですね。彼はなぜ、あんなに上手にネコとコミュニケーションが取れるのでしょう? その答えの一端が、彼の最初の写真集『おきて』にあります。

『おきて』は、1982年から1年半に渡って、岩合が妻子とアフリカのタンザニアにあるセレンゲティ国立公園で暮らしながら撮った写真をまとめたもの。たとえば、ライオンがシカやヌーを襲って食べている写真があり、その横にはライオンの子の写真が並んでいます。そうした組み合わせ方からも、岩合の得た答えがにじみでているように思うのです。

生き物の世界に、自分はどう向き合うのか。

アフリカの生き物たちを撮りながら、岩合はきっと体で感じとったのです。人間を含めた生き物のすべてが、この地球上で生きていくための一つの秩序がある。すべての命を優しく包み込んでくれる豊かな力がある。それこそが“掟”なのだ、と。

そして今、一人の写真家として、すばらしいネコ写真を撮っている。彼のネコとのコミュニケーションには、アフリカで1年半にわたって動物と接しながら見つけた方法が息づいているように思います。

『森林列島』(水越 武)

春なら桜を、秋なら紅葉を。

自然の美しさを目の当たりにしたとき、カメラを向けたくなるものです。実際に撮り続けていると、やはり迷う瞬間が出てきます。

この雄大な自然をどう撮ればいいのだろう?

そんなときに紐解いてみて欲しいのが、山岳写真家・水越武の写真集です。彼が森や渓谷を歩きながら撮った、たくさんの自然の姿を収めた『森林列島』は、1999年に第18回土門拳賞を受賞しました。

私も、5年にわたって仕事で全国の森を撮り歩いた時期がありました。そのとき、常に参考にしていたのもこの1冊です。

亜熱帯から亜寒帯にいたる複雑な気候条件が支配する日本列島には、太古から今日に至るまで、豊かな生態系が息づいています。『森林列島』は、各所それぞれに表情が異なる森林を、樹木の一本に至るまで丁寧にすくいとっています。

黒部渓谷を撮る。白馬雪渓を撮る。森の中の一本の木を撮る。自然に対するそんな向き合い方、写真の撮り方もあるのだと、自然の中で佇むだけの私に貴重な示唆を与えてくれました。

まとめ

ここに取り上げた写真集は、無数にある優れた写真集の中のほんの一部です。日々生まれては、消えていくもの、残っていくもの、いろんな一冊があります。

写真の撮り方に迷ったときはぜひ、写真集の世界を覗いてみてくださいね。

フォトアドバイスが出版している写真集も紹介します。

今回、写真集を紹介してくれた写真家 五海ゆうじの花写真集です

山岳写真家 村田一朗が北アルプスの燕岳を撮りためた写真集です

フォトアドバイス受講生 片貝好昭の花写真集です

フォトアドバイス受講生 橋爪寛の写真集です

\ SNSでシェアしよう! /

一眼レフの教科書| 写真教室フォトアドバイス【公式】の注目記事を受け取ろう

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

一眼レフの教科書| 写真教室フォトアドバイス【公式】の人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

こちらの記事も読まれています

  • 「おすすめ写真集」写真家ご夫妻がお気に入りの6冊を徹底レビュー