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初めてのパンフォーカス撮影!レンズ+絞り値+ピント位置 の組み合わせ方

ウェブ写真教室 フォトアドバイスの佐藤です。

今回は風景写真の印象をアップさせるパンフォーカスについてお伝えします。

まずは受講生のご質問です。

パンフォーカスで撮りたいのですが、手前から山までピントが合うようにつららの手前から3分の1ぐらいにピントを合わせました。これでいいのでしょうか?

風景写真の印象をアップさせるパンフォーカスとは?

一眼レフを購入する目的として「ボケを活かした写真を撮りたい」というご意見をよく聞きます。ふんわりした大きなボケのある写真は、一眼レフの醍醐味(だいごみ)と言えますね。

イメージ通りの写真を撮れるのが一眼レフの魅力です。雄大に開けた大自然のように、風景写真では画面の隅々までクッキリ&ピシッとピントを合わせることで、写真の印象がアップします。

この作例のように画面の手前から奥までピントが合った状態をパンフォーカスといいます。※ 正確には「ピントが合ったように(見える)」ですが、便宜上このように表現しますね。

手前のお花畑と遠方の山を組み合わせたような風景写真を撮られる方なら、ぜひ覚えておきたい撮影テクニックですね。

ここではパンフォーカスを得るために必要なレンズ、カメラ設定、ピント合わせの基本をお伝えします。またパンフォーカスを活かす風景写真の主題と画面整理の考え方をお伝えします。

パンフォーカスは被写界深度のコントロール

カメラの基本であるf値(絞り値)のところで被写界深度を勉強したのを覚えていますか?被写界深度とはピントが合ったように見える範囲ですね。

被写界深度をコントロールできようになると、ボケを活かした写真を撮れるようになるので、写真の表現範囲がグッと広がります。この被写界深度をより深くして、手前から遠方まで被写界深度の範囲がカバーできた状態がパンフォーカスです。

図で説明しましょう。カメラのピントはピント位置を決めた位置から被写界深度の分だけピントが合ったように見えるんでしたよね。

このように被写界深度が浅い状態で手前の花にピントを合わせると、より手前の花や奥の山々がボケてしまいます。

次に、奥の山にピントを合わせると、今度は手前の花がよりボケてしまいます。

ここで被写界深度を十分深い状態にして、ピント位置を適当な場所に合わせることで、手前の花から奥の山々までピントが合ったように見える状態ができます。これがパンフォーカスです。

被写界深度のおさらいです。パンフォーカスを得るために被写界深度を深くするには、

(1)焦点距離の短い広角レンズを使う

(2)f値(絞り値)を大きくする

(3)ピント位置をカメラから離す

の3つの方法がありましたね。

この焦点距離(レンズ選択) / f値(絞り値) / ピント位置の3つをちゃんと理解して現場で判断できるようにしましょう。

焦点距離とf値を変えてパンフォーカスを試してみた

実際に焦点距離とf値を変えてパンフォーカスを試した例を紹介します。

今回使用したカメラはCanon EOS 7D MarkII(APS-C機)です、APS-Cとフルサイズでは焦点距離、f値(絞り値)、ピント位置を同じ条件で撮っても被写界深度が若干異なります。フルサイズ機の方はパンフォーカスを得る条件の目安としてご覧ください。

このように、遠くの高層ビルと近くのバッジが両方画面に入るようにカメラを構えました。その状態で、焦点距離(レンズ選択) / f値(絞り値) / ピント位置の3つを変えて撮ってみた画像を比較しました。もちろん、カメラがブレてしまうとパンフォーカスの判定ができないので、三脚+ミラーアップ撮影を使っています。

広角レンズ 18mm(フルサイズ換算 28mm) / ピント位置 2m

風景写真でよく使われる広角レンズ18mm(フルサイズ換算 28mm)で撮影しました、ピント位置は手前2mです。f値(絞り値)を変えていくと、f8より大きいあたりから遠方のビルにピントが合い始めてパンフォーカスが得られています。f22まで大きくするとピントが逆に甘くなっています。これは回折現象の影響ですね。

広角レンズ 18mm(フルサイズ換算 28mm) / ピント位置 5m

次にレンズはそのままでピント位置を5mまで離しました。するとf4からパンフォーカスが得られるようになりました。

広角レンズ 18mm(フルサイズ換算 28mm) / ピント位置 10m

ピント位置を10mまで離すと、5mと同じようにf4からパンフォーカスが得られます。ただf22まで絞ったときに回折現象でピントが甘くなる傾向は同じですね。

中望遠レンズ 50mm(フルサイズ換算 80mm) / ピント位置 2m

レンズを50mm(フルサイズ換算 80mm)に変更しました。すると広角レンズとは違ってf値(絞り値)をf16まで大きくしてもパンフォーカスが得られません。

中望遠レンズ 50mm(フルサイズ換算 80mm) / ピント位置 5m

ピント位置を5mまで離したところ、f16あたりでようやくパンフォーカスが得られるようになりましたが、少しピントが甘いように見えます。

中望遠レンズ 50mm(フルサイズ換算 80mm) / ピント位置 10m

ピント位置を10mまで離すとf5.6からパンフォーカスが得られるようになりました。焦点距離が長いレンズを使うとパンフォーカスを得るのは大変ですね。

望遠レンズ 200mm(フルサイズ換算 320mm) / ピント位置 2m, 5m

一応、望遠レンズでも試してみました。ピント位置を2m、5mと変えてみましたが、f22まで絞っても背景のビルには全くピントが合いませんでした。

焦点距離とf値(絞り値)を変えて試してみたまとめ

このように焦点距離が短いレンズを使えば、無理にf値(絞り値)を大きくしなくてもパンフォーカスが得られることがわかります。

一方で、焦点距離が長いレンズを使ってしまうと、どれだけf値(絞り値)を大きくしてもパンフォーカスが得られないことがわかりますね。

また、ピント位置が手前すぎてもパンフォーカスが得られません。あとで解説しますが、少なくともピントを合わせたい範囲の手前1/3より遠い位置にピント位置を合わせるとよいでしょう。

実際の撮影現場では、絞り優先モードでf値(絞り値)を変えて撮り、背面液晶で拡大表示して、パンフォーカスが得られているかチェックしてみて下さい。f値(絞り値)もいたずらに大きくする必要はありません。広角レンズを使えばf5.6~f8でも十分なパンフォーカスを得ることができます。

f22など大きなf値(絞り値)を使ってしまうと、回折現象という別の画質低下が見えてしまうので、避けたほうがいいですね。

また、風景写真のようにISO感度を低くした状態でf値(絞り値)を大きくすると、シャッタースピードが遅くなります。せっかく画面の隅々までピントを合わせようとしているのに、手ブレしてしまっては意味がありません。パンフォーカスに三脚は必須ですね。

パンフォーカス撮影のポイントをまとめました

  • 焦点距離の短い広角レンズを使う
  • 絞り優先モードを使い、背面液晶でピントを確認する
  • f値(絞り値)はf8~16が目安
  • ピント位置の目安はピントを合わせたい範囲の手前1/3
  • 三脚を使ってブレを防ごう

パンフォーカスを計算式から求めてみる(数字に強い方向け)

実際の撮影現場で「焦点距離はいくつのレンズを使うか」「そのときのf値(絞り値)とピント位置は?」とあれこれ考えるのは大変ですが、慣れてくると「こんなもんかな?」という感じで決められるようになります。

まずは実際にレンズの焦点距離、f値(絞り値)、ピント位置を変えてみて、背面液晶を拡大表示しながら試してみましょう。

実は、このパンフォーカスを得られる焦点距離とf値(絞り値)を計算から求めることができます。数字が苦手な方は読み飛ばしても大丈夫ですよ。

被写体深度について詳しく数字で確認したい方は、次のような計算サイトを参考にしてくださいね。

※この計算サイトで出てくる数字(メートル)は写真の焦点が「合っているように見える」範囲です。

テーブルフォトに便利な法則!ピント位置は手前1/3

何キロメートルも離れた風景を撮るケースだけでなく、室内の撮影でもパンフォーカスの考え方は活かせます。

例えば商品撮影のように被写体を忠実に撮りたい場合はパンフォーカスの考え方が必要ですね。

被写界深度はピント位置から手前より奥の方向により伸びるので、テーブルフォトのようにピントを合わせたい範囲が決まっている場合は「ピント位置 手前1/3」を覚えておくといいですね。

パンフォーカスを得ようとして広角レンズを使うと、画面の周囲に余計なものが写ってしまうことがあります。そんなときは画面の中央部分をトリミングしてしまいましょう。

手前1/3にこだわらない、パンフォーカスより大事な主題と画面整理

さて、ここまでの解説でパンフォーカスについてご理解いただけたと思います。ここからはパンフォーカスを現場で使いこなすためのプロの技をお伝えします。

まず覚えてほしいのは、パンフォーカスは万能ではありません。被写界深度を深くしてピントが合ったように見える状態と、クッキリとピントがあった状態は別物です。

確かにパンフォーカスは写真の印象をよくする手段の一つですが、風景写真ではパンフォーカスより、もっと大事なポイントがあります。

今回のご質問のお写真では、構図的に山と水面の反射が主題ですね。画面右のつららにピントを合わせたということですが、つららそのものは主題ではありません。また、手前の雪の湖畔には、雪以外にピントを合わせて見せたいものはありません。

つまり、この場面では主題である遠景の山にピントの「芯」をもってこないといけません。

パンフォーカスの考え方でいうと、広角レンズを使って、f16~f22まで絞り込んでいるので、手前1/3の位置にピントを合わせれば遠方の山までピントがあったように撮れます。

ただし、このピントは合ったように見える「許容範囲」です。ピントの芯は山でなく1/3の位置にあります。

写真をじっくり見ると、少し山のピントが甘いようにも見えます。したがって、このようなケースではキチンと山にピントを合わせて撮ることをおすすめします。

繰り返しますが、いい写真の条件は「主題をハッキリさせる」こと、そのためにピントの「芯」は主題に合わせましょう。

その場合、手前の雪にピントが合わなくなる可能性があります。ただ画面整理の考え方で言うと、この雪を画面に入れるのか、入れないのかも含めて画面整理を見直した方がいいでしょう。

まとめ

  • パンフォーカスとは、手前から奥までピントが合っている状態
  • 広角レンズ、f8から16、ピント位置は手前1/3が基本
  • 写真の基本、ピントは主題を絶対に忘れないで!

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